アダプティブラーニングは、成人教育の世界でバズワードになっていますが、これは意外とは言えません。パーソナライズされたニュースフィードと、私たちのことを学習し適応するテクノロジーの時代において、企業トレーニングにも適応したテクノロジーの導入を期待するのは自然なことでしょう。私たちの時間は限られており、適切な情報が必要です。しかし、アダプティブラーニングは、それらのニーズに応えることができるのでしょうか?これまでの間、インストラクショナルデザイナーは、学習者の取り組みを強化させるために、該当コースを受講する理由を適切に伝える学習コンテンツの開発を行なってきました。従業員は、関連性があると感じる自分の役割と結びついた学習体験を望んでおり、すでに知っている知識でも改めて整理できる機会を求めています。
倫理・コンプライアンストレーニングでは、アダプティブラーニングの主な特徴のひとつである、適切なコンテンツを学習者に提供する、ということが重要です。しかし、真に効果的な学習体験を届けるには、視聴者が誰であり、またその視聴者にどのようなリスクがあるのかを理解する必要があります。それでは、実際のところ、アダプティブラーニングとは何か、また注目に値するのかどうかを詳しく見てみましょう。
アダプティブラーニングとは?
アダプティブラーニング(適性に合わせた学習法))は、その名のとおり、誰にでも適用できる汎用的学習手法ではありません。一人ひとりの学習者に同じコンテンツを届けるのではなく、トレーニングを通じて学習者それぞれ違いを理解し、コンテンツを適応させることに焦点をおいています。学習者が自分自身をどのように認識しているか、またはトピックについてどのくらい知っているかという情報を基にコンテンツが調整されます。その結果、視聴者は知識やスキルセットに応じてさまざまな学習体験が得られます。
アダプティブラーニングでは、一連の標準機能を使って、以下のさまざまな学習体験を作り出します。
- プロファイリング機能により、学習者は自分の役割、場所、部門など職務の詳細を選択し、受講するコースのコンテンツに自分のプロフィールを適合させることができます。
- テストアウトまたはテストダウン機能により、学習者はすでに把握しているコンテンツを除くことができます。これによりトレーニングに掛ける時間をできる限り少なくすることができます。コンテンツにアクセスするために、学習者はまず初めに評価テストを受けます。すでに主要となる観点を理解できており、それを適用できることを証明できれば、該当の学習項目は達成されたことになります。テストアウト、テストダウンの質問は、期待される結果を確実に測定できるよう慎重に作成する必要があることに留意してください。倫理・コンプライアンスのトピックには重要な課題が多く含まれているため、答えには、明白すぎず、本質を見極められるよう批判的思考(クリティカル・シンキング)を求める必要があります。
- テストアップ機能では、学習者に合わせてより高度なコンテンツを提供することができます。学習者が評価テストの質問に正解するたびに次のコンピテンシーレベルに進みます。この機能は、倫理・コンプライアンスの特定のトピック (贈収賄防止などコンピテンシーのレベル付けが難しいトピック) には適さない一方、倫理的リーダーシップ、原則に基づいた意思決定、包摂性の育成などのコンピテンシーは、レベルを向上させ、効果を測定する機会を与える価値があります。
倫理・コンプライアンストレーニング向けのアダプティブラーニングとリスク管理
アダプティブラーニングは注目に値する強力なツールですが、導入の前には、学習者を中心に据えた着実な設計プロセスを経る必要があります。アダプティブラーニングを導入する際に注意が必要である理由は3つあります。
- 倫理・コンプライアンスの重要な情報を省くリスク。学習者に与えるコンテンツを多様にしすぎると、重要な情報が必要な人に届けられなくなるというリスクが常に存在します。このギャップは、倫理・コンプライアンスのチームと周りの組織をリスクにさらすことになります。学習体験で目的をどのようにサポートするのか理解するには、視聴者と望ましい行動についての徹底した分析が必要となります。まずは、結果や行動を、学習者のタイプとその潜在的なリスクにマッピングし、次に一連の評価テストと内容を合わせていきます。
- 長時間の学習体験。LRNでは、学習者の選択に応じてコンテンツをリアルタイムで適応させていくコース設計を開発してきました。しかし、コースが長くなってしまい、一方で、学習者は要点に絞ったトレーニングを望んでいることが判明したため、最終的にはほとんどの開発から手を引きました。学習者は、目の前にあるコンテンツこそが必要としていることであり、制作側が利用側のニーズを理解して過度な操作やストーリー展開を含んでいないことを確かめたいのです。そのため、LRNでは現在、従業員が必要なときにすぐにどこからでも簡単にアクセスできるマイクロラーニング・エクスペリエンスを提供することに注力しています。このプラットフォームにより、コンテンツが学習者の心に直接響き、より理解しやすく感じられることが期待できます。
- 時間をかけて複数の形式で内容を反復することが重要です。アダプティブラーニングは、コンテンツを絞ることに重点を置いているため、反復の必要性を見過ごすことがあります。実際、反復することにより学習者の記憶が強化されます。普段から倫理・コンプライアンスの情報を利用する機会がない限り、たとえトレーニング中のデータが十分な結果を示していても、学習者はその内容を覚えていない可能性があります。効果的なペースで反復が行われるのであれば、同じ概念を複数の方法で学習者に提示することには意義があります。「必要なときに少しだけ」のアプローチを学習システムに取り入れ、マイクロラーニングのカリキュラムを設計することにより、トレーニング内容の記憶の定着と実践能力が向上します。
学習戦略にマイクロラーニングとアダプティブラーニングが必要な理由
倫理・コンプライアンストレーニングの大きな焦点は、学習者のリスクレベルに応じた関連性の高いコンテンツを確実に届けることです。アダプティブラーニングは学習者に適切なコンテンツを提供する手法であるため、優れた学習戦略として役立ちます。しかし、今日のアテンション・エコノミー (関心経済) において、効果的な倫理・コンプライアンストレーニングを設計するには、アダプティブラーニングとマイクロラーニングを組み合わせた完全な戦略を作ることが適しています。
もはや長時間のトレーニングのために時間を割ける人はいません。また、それは人の行動を変えるための最も効果的な方法でもありません。トレーニングツールの目標を適度なものとし、人を引き付ける短時間のコンテンツにすることにより、必要なときにすぐに情報にアクセスして利用する、という現在の社会習慣に合う役立つものになります。貴社の倫理・コンプライアンストレーニングの目標にマイクロラーニング戦略を加えることを、ぜひご検討ください。必要なときに簡単にアクセスできる学習のニーズに応えることができれば、ツール形式に関係なく、学習者の心を捉えるコンテンツとなります。(LRNが新しく設計したマイクロラーニングのデモをお申し込みください。コンテンツのサンプルをご覧いただけます。)
マイクロラーニング戦略の最も優れた点として、アダプティブラーニングの要素を織り込むことができます。プロファイル機能とテスト機能は、マイクロラーニングコンテンツを必要としている人を把握し、的を絞ったトレーニングと、従業員の役割、場所、経験年数などに応じたパーソナライズされた学習オプションを提供するのに役立ちます。
重要なポイント
いずれの学習設計を選択するにしても、視聴者が誰であり、またその視聴者が与えられたコンテンツを通じてどのような成果を達成する必要があるのかを十分に理解する必要があります。学習者にとって重要なポイントが何であるかを決め、それらの目的に合わせた設計を行います。それがアダプティブラーニング、もしくはマイクロラーニングであったとしても、優れた学習体験には優れた学習設計が必要です。単なる機能のアドオンではなく、時間を有効に使い、情報をうまく伝え、定着するよう設計されたアプローチが必要です。これらのアプローチが実際どのように機能するかご覧いただくために、今すぐLRNの新しいマイクロラーニングのコンテンツのデモをお申し込みください。